3月も後半に差し掛かると、奈良では「氷室(ひむろ)神社」の桜の話題をよく耳にします。氷室神社のしだれ桜は「奈良一番桜」ともよばれ、奈良で一番早く満開になり、春の訪れを告げると言われています。
今年(2021年)は、例年より早く咲き始めていると聞き、お花見散歩に出かけてみました。
ソメイヨシノがお出迎え

近鉄奈良駅から大宮通りを東へ向かって坂を上り、てくてくと歩いて約15分ほどで氷室神社の鳥居が見えてきます。この時期はきれいな桜の姿も見えるのでわかりやすいと思います。燈籠脇のソメイヨシノも、このあたりの奈良公園の桜より開花が早いようです。(2021年3月18日撮影)

氷室神社は、奈良時代、春日野に造られた氷室(氷の貯蔵庫)に、氷の守り神を祀ったのが始まりとされています。 のちに現在の地に移築されました。

現在も全国の製氷業者・販売業者からの信仰が篤く、毎年5月1日には「献氷祭」が催されます。その際、神前には鯛や鯉を封じ込めた氷柱が捧げられます。
氷室神社にあやかって奈良はかき氷屋さんがとても充実しており、「かき氷の聖地」ともよばれています。

手水舎の横には「鷹乃井」という名の石造りの井戸があります。

切妻造、本瓦葺の四脚門(しきゃくもん)をくぐり拝殿へ向かいます。

丸い台座に乗った狛犬です。しだれ桜がよく似合っています。

拝殿は、楽人が舞楽を奉納するための舞台になっています。奈良は古来雅楽の中心地でしたが、その楽人の拠点が氷室神社です。入母屋造、妻入、桟瓦葺の建物です。
奥に見える現在の本殿は江戸時代の式年造替で立て直された姿といわれ、三間社流造、檜皮葺の社殿となっています。中央に闘鶏稲置大山主命 (つげのいなぎおおやまぬしのみこと)・左側に大鷦鷯命 (おおささぎのみこと)・右側に額田大仲彦命(ぬかたのおおなかつひこのみこと)をお祀りしています。

本殿の床下には左右の二室が造られ、側面に両開き板戸があり、左側出入口には檜皮葺の庇も設けられています。他の社殿建築では類例がなく独特な建築様式となっています。

模型の解説によると、平安時代の氷室神社本殿は、出雲大社本殿と同等の建築面積があったそうです。建築形態は、伊勢神宮の本殿を向かい合うように二棟を並立し、その二棟の妻全体に向拝(こうはい:社殿屋根を正面の階段上に張り出した部分のことで、参拝者の礼拝する所)を設けて正面とする異例のものでした。

拝殿(舞殿)のまわりをぐるり一周して、上を見上げると、屋根の上に風変りな鬼瓦を発見。ここが雅楽の舞台ということもあって、雅楽の面のようにも見えます。

四脚門の近くに置かれていた氷みくじ。おみくじを氷に張り付けると運勢が浮かび上がってくるというものです。氷の神様からのお告げのようですね。

境内のしだれ桜の中でも、こちらは若い方のしだれ桜です。満開に近い状態で、8分咲きぐらいです。

「奈良一番桜」と言われているしだれ桜は、樹齢100年を超える古樹です。病気で大きな枝は切り落とされ、樹勢が衰えています。

以前は、四脚門や狛犬の周りにまで大きく降り注ぐ勢いで、見事に咲き誇っていたしだれ桜。かつての華やかさを思い出すと寂しいですが、それでも懸命に咲く今の姿もまた美しく見えました。

境内では、ハクモクレンも見頃を迎えていました。ハクモクレンの花を撮ろうと頑張っている娘。その下で、風で舞い散った花びらを必死に食べている鹿さんがとっても気になりました。甘くておいしいのかな?
氷室神社の桜の開花状況はこちら、
氷室神社公式サイト:http://www.himurojinja.jp/index.html
まとめ

毎年、氷室神社の桜から春の足音を感じ、わくわくしています。若いしだれ桜の元気な姿とともに、古樹が穏やかに生きられるように見守っていきたいと思いました。