悠久の歴史を感じさせる奈良。奈良と言えば、そう「大仏さん」です!遠足や遊学旅行で訪れたことがあるという方も多いと思います。
今回は、奈良びとが行く「普段のゆるり散歩」をご紹介します。
奈良時代の姿を残す国宝「転害門」

今日のお散歩のはじまりは、ここ「転害門」から。観光客も少ない穴場の観光スポットです。
「転害門」(てがいもん)は切妻造り、本瓦葺き、三間一戸の八脚門で、国宝に指定されています。
東大寺境内の北西角にあり、奈良時代、東大寺創建当初の姿を残す数少ない貴重な建造物です。というのも、大仏殿や大半の伽藍が、戦火で度々消失しているからです。「よくぞ残っていてくれた!」と、この地で繰り広げられた長い歴史に思いを馳せずにはいられません。

また、転害門は寺門ですが、しめ縄が張られています。これは神仏習合の名残で、奈良時代、大仏建立の守護神として、宇佐八幡宮(大分県宇佐市)の神様が、この門から東大寺へ迎えられ、境内にある手向山八幡宮(たむけやまはちまんぐう)に鎮座したことが始まりと言われています。
転害門の名前の由来は数々ありますが、「害を転ずる」という意味がなんだかしっくりくる感じがします。ちなみにこの辺りの町名は手貝(てがい)町といいます。

転害門の北隣には「奈良市きたまち転害門観光案内所」があります。近代建築家である岩崎平太郎による設計で、昭和15年に南都銀行手貝支店として建設されました。
内部は吹き抜けで、古い分銅時計などの展示物もとても素敵です。時間があればぜひ覗いてみてください。観光ボランティアガイドさんが「転害門」のことや、奈良のイベント情報など色々教えてくださいます。
開所時間は、毎週木曜日と年末年始を除く10時~16時です。耳寄りな情報をゲットして、さぁ先に進みましょう♪
水面に映る景色も美しい大仏池
転害門を過ぎて、東大寺大仏殿に向かって歩いていくと池が見えてきます。ここは大仏殿の裏側にあたります。正倉院大池とも言われ、正倉院の防火用ため池とされています。
池の向こう側に大仏殿、背景に春日山、若草山、御蓋山が連なる景色が美しく、鹿たちをのんびり眺めながら、ぼーっとするのにおすすめなスポットです。

大仏池がひときわ際立つのが、紅葉の季節です。特に、イチョウの葉が落ちて、黄色の絨毯のように一面染まる様子がとても見事です。秋はカメラマンや絵描きさん達で一番にぎわう季節です。また、夕日や月を眺めるのも最高です。
東大寺大仏殿へ

大仏池から東大寺大仏殿へと向かいます。参道から南大門を通る王道さんぽもおすすめですが、ほとんど人が歩いていない静かなこの道も一味違った趣があります。

さぁ、東大寺大仏殿に着きました。日本で一番大きい仏様、「ならの大仏さん」が鎮座するのがここ大仏殿です。とても壮大で、何度訪れてもその荘厳さに心が奪われます。間口57m、高さ48m、奥行き50mで木造建築としては世界最大規模です。

新型コロナウイルスの対策として4月半ばから一時期、本堂の拝観が停止されていました。代わりにその間、普段は通れない中門が開かれ、大仏殿正面の「観相窓(かんそうまど)」が特別に開き、遠くから窓越しに大仏さんのお顔を参拝できるようになっていました。今現在は拝観も再開され、9月の連休頃から徐々に賑やかさを取り戻しつつあります。

奈良公園を歩いて、大仏殿前を通り、コロナの終息をお願いするというのが、ここ最近の私のお散歩コースになっています。奈良に住んでいると、いつ何処にいても、「ならの大仏さんが見守ってくれている」ような気がします。コロナ禍で変化していく奈良の風景を見ていると、何気ない普段の生活が本当に愛おしいなぁと感じます。
東大寺公式ホームページ:http://www.todaiji.or.jp/

散歩中には、いろんな鹿たちに出会います。今日は正倉院の近くで、かわいい子鹿に出会いました。
天平の宝物を現代へ
今日のお散歩の最後は、シルクロードの終着駅と称される正倉院です。
聖武天皇の遺品や東大寺の儀式で使用された品など、奈良時代を代表する約9千点に及ぶ宝物が収蔵されていました。これだけ多くの宝物を良好な状態で保存できたのも、高床式の校倉造りのおかげだったといわれています。

毎年秋には、宝物の一部が正倉院展として奈良国立博物館で公開されています。今年で72回目となる展覧会ですが、毎年初出陳のものがあることを思うと、その宝物の数に圧倒されます。
古代びとの色づかいやデザインは、今にも勝るセンスであふれています。正倉院展は、そんな宝物たちの息づかいを身近に感じられる機会です。
2020年の正倉院展は10月24日から開催されます。今回は新型コロナウイルスの対策として入場制限が行われ、当日券の販売はなく事前予約制となっています。
宮内庁正倉院公式ホームページ:https://www.kunaicho.go.jp/event/shosoin.html
奈良国立博物館公式ホームページ:http://www.narahaku.go.jp/exhibition/2020toku/shosoin/2020shosoin_index.html
アクセス
転害門へは、近鉄奈良駅またはJR奈良駅から奈良交通バスに乗り、手貝町バス停で降りてすぐです。近鉄奈良駅からだと徒歩20分程度です。
まとめ
今回は、奈良びとが行く普段のお散歩コースをご紹介しました。観光メインルートとは一味違った奈良もおすすめです。東大寺の境内はとても広く、魅力あふれるスポットが他にもたくさんあります。「今日はここに寄ってみようかな~」とのんびり考えながら、奈良ゆるり散歩に出かけてみてはいかがでしょうか。