古来から日本有数の桜の名所として知られる奈良県吉野山。春には、山全体を埋め尽くす約3万本の桜が咲き誇り、大勢の花見客で賑わいます。
春のイメージの強い吉野山ですが、静寂な空気に包まれた冬の吉野山も素晴らしいです。初詣に訪れた吉野神宮や、世界文化遺産の金峯山寺(きんぷせんじ)などの神社仏閣とともに、吉野山のおすすめスポットをご紹介します。
吉野神宮へ
奈良市街から南へドライブすること約1時間20分。吉野山に到着です。吉野山は「紀伊山地の霊場と参詣道」の中核として、山全体が世界遺産に認定されています。また、吉野山のある吉野町は「日本で最も美しい村」連合に加盟。「森林セラピー基地・セラピーロード」にも認定されており、癒しの森林浴が満喫できるパワースポットとしても注目されています。
まずは、吉野山麓の下千本にある吉野神宮へ。大鳥居のすぐ近くに専用駐車場(1時間以内無料)があります。

吉野神宮は明治22年(1889)後醍醐天皇を祭神として、明治天皇によって創建されました。社殿は昭和7年(1932)に改築されており、本殿、拝殿などは全て檜造りです。
数日前に降った雪がまだ残っていました。初詣の参拝をした後、先ほどから気になっていた大鳥居側の狛犬のもとへ。
とてもスリムで引き締まった体つきの狛犬です。端正なお顔立ちで表情も魅力的。凛々しい佇まいの狛犬に思わず見とれてしまいました。
世界文化遺産の金峯山寺へ
車で下千本駐車場まで移動し、ここから歩いてめぐることにしました。下千本駐車場はこの時期、無料でしたが、桜と紅葉シーズンのみ有料となります。特に桜のシーズンは多くの観光客で賑わい、道路の規制も行われるので、お花見に訪れる際は事前に確認しておくと安心です。

金峯山寺の国宝仁王門が見えてきました。雪が残る重層入母屋造の屋根が美しいです。
仁王門は南北朝時代に建立されたと伝わるもので、寺内に現存する最古の建造物です。門の左右に安置されている約5mの金剛力士(仁王)像は、東大寺南大門の像に次ぎ、日本で2番目の大きさを誇っています。今回は残念ながら仁王門の修理中でご不在でした。

金峯山寺の本堂、蔵王堂にやって来ました。ここは金剛蔵王権現像を祀る修験道の聖地です。吉野山は一帯が行者の修行場となっていて、その総本山が金峯山寺です。白鳳年間(7世紀後半)に、修験道の祖・役行者(えんのぎょうじゃ)が創建しました。四方約36m、高さ34mの大きな本堂で、木造建築としては東大寺大仏殿に次ぐ大きさです。重層入母屋造り、檜皮葺きの建物はとても荘厳で優美。歴史の厚みを感じさせます。
役行者が金峯山で修行中、蔵王権現のお姿を山桜の木に彫刻したことから、吉野山では山桜が御神木として保護、献木され、日本随一の桜の名所となりました。

訪れた日は1月3日で、ちょうどお正月の法要「修正会」が行われていました。世界平和・地球安穏・家内安全・身体健全を祈願する法会です。大きなお堂に読経の声と法螺貝の音が響き渡ります。自然と心が落ち着き、新年ということもあって身も引き締まる思いがしました。法要後、修正会のお札を頂きました。
金峯山寺公式サイト:https://www.kinpusen.or.jp/index.html
首から上の守り神、脳天大神へ

蔵王堂の脇に気になる看板を発見!450段の階段に挑みます。
どんどん石段を下ります。山中の緑に癒され気持ちがよいので、足取りも軽くどんどん進みます。一方で、帰りの心配が…。「だいぶ上らなあかんのとちゃう?」

脳天大神へ無事到着です。脳天大神は金峰山寺の塔頭のひとつで、頭の病気や学業試験などの願い事を成就してくださる守り神です。子どもたちの学力向上を念入りに祈願しました。
帰り道は気合を入れて石段を上ります。お正月で食べ過ぎたせいか、体もどんどん重く感じました…。
吉野名物の葛うどんと柿の葉寿司
なんとか蔵王堂まで戻って来たところで、ちょうどお昼休憩。ここまでよく歩いたので、子どもたちも「お腹空いた!」を連発しています。

蔵王堂を後にして進むと、「柿の葉寿司」「葛うどん」の文字が目に飛び込んできました。吸い寄せられるように吉野名物のお店へ。

「はるかぜ」さんの葛うどんは、葛粉が練りこまれたうどんに、お出汁にも吉野葛でとろみがついていて、とてもおいしかったです。とろみ好きにはたまらない一品です。柿の葉寿司と自家製のごま豆腐も優しい味でした。晴れているとは言え、雪が残る外は寒かったので、葛うどんで体もほかほかになりました。
中千本にある花矢倉展望台へ
参道さんぽを楽しんだ後、上千本に向けて再び車で向かいました。本当はこのまま歩いて行きたいところですが、末っ子の足では日が暮れそうなので車を取りに戻りました…。

途中、吉野山屈指の絶景ポイント「花矢倉展望台」に立ち寄ります。一気に視界が開け、上千本、中千本、蔵王堂を見下ろせ、金剛山、葛城山、二上山が遠望できます。春には咲き誇る桜が一望できるとのこと。春にぜひ訪れてみたいビュースポットです。
上千本にある吉野水分(みくまり)神社へ
最後に訪れたのは、上千本にある吉野水分神社です。こちらも世界文化遺産に認定されています。本来は水を司る神ですが、「みくまり」が「御子守(みこもり)」となまって、子守さんと呼ばれ子宝の神として信仰されています。

訪れた時、境内には誰もおらず貸切り気分が味わえました。ここまで上がってくると残雪も多いです。

社殿は慶長9年(1604)豊臣秀頼が再建したものです。本殿は、桁行9間、梁間2間の流造り(ながれづくり)の形式をとり、正面に3つの千鳥破風が並んでいます。3殿1棟造りの珍しい本殿で、桃山時代の美しい建築を見ることができます。
小さな庭を挟んで、本殿と向かい合わせに拝殿があり、楼門や回廊も庭を囲むように美しく納まっています。雪をまとった社殿に包みこまれた空間は、雪の反射が綺麗で、特別感が漂っていました。冬の澄んだ空気の中、とても厳かな気持ちになりました。
吉野山へのアクセス
・電車では、近鉄「吉野駅」下車後、ロープウェイ利用、山上駅下車。(吉野大峯ケーブルバスで吉野山をめぐる方法もあります。)
・吉野神宮へは、近鉄吉野神宮駅より坂道を徒歩約20分ほどです。
・車では、終日無料の下千本駐車場(約400台収容)が便利です。(桜と紅葉の時期のみ有料)
※桜のシーズンは、マイカー入山規制が行われたり駐車場利用も普段と異なるので、お花見に訪れる際は事前に確認しておくと安心です。
奈良県吉野山観光協会公式サイト:http://www.yoshinoyama-sakura.jp/index.php
まとめ
冬の吉野山は静寂で心落ち着くところでした。吉野山は今もなお多くの修行者が日々修行を続ける聖地です。1300年間守り継がれてきた桜がこれから先もずっと息づくように、自然を敬う心を大切にしたいと思いました。

思いがけず雪景色も見れました。澄みきって凛とした冬の空気は、吸い込むごとに体が中から浄化されるようでとても心地いいです。四季折々のまたひと味違った吉野山の空気感を味わってみたくなりました。