夏のお散歩には、意外と涼しい庭園めぐりがおすすめです。今回は、国の特別史跡・特別名勝にも指定されている、『小石川後楽園』を訪ねました。
小石川後楽園は、あの「黄門様」水戸光圀の庭として知られています。水戸藩初代藩主徳川頼房が築いた庭園を、2代目の光圀が趣向を凝らして完成させました。
「後楽園」というと、岡山県にある日本三名園の『岡山後楽園』もあります(国の特別名勝)。こちらも江戸初期に造られた庭園ですが、両者に直接の関係はなさそうです。
「先憂後楽」(=上に立つ者は、民よりも先に国のことを心配し、民が楽しんだ後で自身も楽しむべきだ)という中国の故事にちなんで名づけられたため、同じ名前になったようです。
さて、庭園散策では、様々な景物のほかに、季節の花も楽しめます。小石川後楽園には花菖蒲田があるのですが、今回の訪問は8月だったので、花は終わっていました。
8月には、桔梗や蓮の花のほか、珍しいレンゲショウマの花も見ることができます。

レンゲショウマは日本の固有種で、花の形が小さな蓮の花のようで、葉がサラシナショウマ(晒菜升麻)に似ているため、「蓮華升麻」という名前がついているそうです。
「森の妖精」とも呼ばれる可憐な花で、うつむくように花を咲かせます。草丈は1メートルにも満たないので、写真を撮るのはちょっと大変です。
小石川後楽園のレンゲショウマは、園内に入ってすぐ右側に咲いていました。小さな花ですが、下から覗き込むようにスマホを構える人が後を絶たないので、すぐにわかります。
次に、やはり夏の花である「蓮の花」を見に行きました。

午後だったので、残念ながら蓮の花は閉じていましたが、大きなピンク色の蕾を見ることができました。

小石川後楽園は、真ん中に「大泉水」という池のある回遊式庭園です。ぐるりと回遊していくことにしました。
蓮池の近くには、「一つ松」という立派な松の木があります。大泉水は琵琶湖を模しており、この「一つ松」は近江八景の「唐崎の松」になぞらえたものだそうです。

蓮池の裏手に向かって石畳を進むと、「得仁堂」という建物がありました。

得仁堂には、光圀が18歳の時に読んで感銘を受けたという、史記『伯夷列伝』の「伯夷・叔斉」の木像が安置されているそうです。

続いて、明の儒学者である朱舜水の設計とされる「円月橋」を見に行きました。写真の撮り方が良くありませんが、水に映る橋の形が満月のように見えるので、この名前がついているそうです。

「愛宕坂」という急な石段もありました。これは危険です!転げ落ちそうで、写真を撮るのもちょっと怖い感じがしました。

光圀といえば、梅の花が好きだったことでも有名です。小石川後楽園の梅林にも、様々な種類の梅の木が植えられているようです。
そういえば、入口売店には、なぜか「梅ジュース」(市販品です)がありました。梅林を見て「なるほど~。」と納得しつつ、梅ジュースを飲みながら一休みしました。

梅林の近くには、花菖蒲田や藤棚のほか、稲田もあります。この稲田では、毎年、地元の小学生が田植えや稲刈りをしているそうです。

稲田の先は、松原になっていて、少し視界が開けます。

松原の一角には、「丸八屋」という江戸時代の酒亭を再現した小屋があります。戦争で焼失し、後に復元されたものだそうです。

大泉水の周囲をめぐって、このあたりで、入口の反対側まで来ました。さらに奥には、水戸藩書院のあった「内庭」がありますが、工事中で入れませんでした。
大泉水には「蓬莱島」という小島がありますが、橋などは架かっていないようです。「舟着き場」があるので、舟で渡っていたのでしょうか。

ふたたび入口付近に戻って、「涵徳亭(かんとくてい)」を外から見てみました。

明り採りにガラス障子を使用していたため、「びいどろ茶屋」と呼ばれているそうです。現在の建物は昭和61年の再建です。喫茶やランチの営業をしていて、中に入ることができます。今回は入りませんでしたが、また来ることがあれば甘味でもいただきたいです。

最後に、涵徳亭の裏手にある「西湖の堤」を見に行きました。
中国浙江省の西湖は、風光明媚な景色で有名です。その西湖の景物の一つに「西湖の蘇堤」があります。湖の上の歩道のようになっていて、その美しさから古来、詩歌や絵画の題材とされてきました。
「西湖の堤」は、江戸時代の教養人にとって憧れの景勝地を大名庭園にとりいれたものです。小石川後楽園のほかに、旧芝離宮恩賜庭園や広島の縮景園などにもあります。

園内をぐるりとめぐって、1時間半ほどの散歩を楽しみました。
アクセス
小石川後楽園へは以下が最寄りです。
- 都営地下鉄大江戸線「飯田橋」駅から、徒歩3分
- JR総武線「飯田橋」駅・「水道橋」駅から、各徒歩8分
- 東京メトロ東西線・有楽町線・南北線「飯田橋」駅から、徒歩8分
- 東京メトロ丸ノ内線・南北線「後楽園」駅から、徒歩8分
▶ 小石川後楽園|公園へ行こう!(東京都公園協会)
まとめ
今回は、真夏の小石川後楽園を訪れました。
花菖蒲の時期は過ぎてしまいましたが、ほかにも蓮の花やレンゲショウマの花などを楽しむことができました。
時代劇でもおなじみの黄門様ゆかりの庭園ということで、光圀の趣味といわれる見どころもたくさんありました。
フリーランスライター、都内在住2児の母。趣味は着物と和裁とお散歩。個人ブログで親子の着物ライフについて発信中(こども浴衣の作り方も公開中)。
ブログ:『着物好きが育てたら、着物好きの娘になったので…』