東京都には、国や都の名勝に指定されている9つの「文化財庭園」があります。
都立文化財9庭園:
- 六義園(文京区)
- 小石川後楽園(文京区)
- 旧岩崎邸庭園(台東区)
- 旧古河庭園(北区)
- 浜離宮恩賜庭園(中央区)
- 旧芝離宮恩賜庭園(港区)
- 清澄庭園(江東区)
- 向島百花園(墨田区)
- 殿ヶ谷戸庭園(国分寺市)
今回は、港区海岸一丁目にある『旧芝離宮恩賜庭園』を訪ねました。

他の都立庭園も周囲に建物がありますが、庭園の周囲が木々に覆われていて、それほどビルなどが気にならないところが多いです。
旧芝離宮恩賜庭園の場合は、高層ビルに取り囲まれていて、「都会のオアシス」といった雰囲気です。

旧芝離宮恩賜庭園は、江戸初期に造られた大名庭園です。江戸時代に何度か所有者が変わりましたが、明治期に入ると宮内省が買い上げて「離宮」となりました。
旧芝離宮恩賜庭園もそうですが、かつての「離宮」は、戦後、自治体に下賜されて公園や庭園として一般公開されているところがほとんどです。
なお、京都には「桂離宮」と「修学院離宮」が残っており、現在も宮内庁京都事務所の管轄となっています。
旧芝離宮恩賜庭園は、回遊式泉水庭園ですが、かつては池に海水を引き入れていました(現在は、海とは繋がっていません)。
当時の水門跡が今も残っています。

池の反対側には、砂浜を模した「州浜」があります。海水を引き入れていた頃は、潮位による景観の変化も楽しめたはずです。

庭園全体の雰囲気としては、江戸初期の大名庭園らしく、当時の文化人の好みを反映した中国趣味が特徴です。
中国趣味の大名庭園によく見られる「西湖の堤」は、中国の景勝地を模した水上遊歩道です。中国杭州にある「西湖」は、江戸時代の教養人にとって憧れの地だったようです。
小石川後楽園にも「西湖の堤」がありますが、もっと小規模で上を歩くことはできません。

旧芝離宮恩賜庭園では、「西湖の堤」を渡って、池の中央にある「中島」に入ることができます。
中島には、中国の伝説で仙人が住むとされる「蓬莱山」が石組で表現されています。

中島へは「八ツ橋」という木の橋も架かっています。現在は、老朽化のため修繕予定で、立ち入り禁止となっています。

庭園内にはいくつか築山がありますが、一番高いのが「大山」です。

大山に登ると、昔は海や房総半島、富士山などが見渡せたのだそうです。

このほか、「枯滝(かれたき)」という滝をイメージした石組も、芝離宮恩賜庭園の見どころの一つです。左右に屏風状に並んだ石の間を通り抜けることができます。

古代遺跡のような四本の柱が並んだ「なぞの石柱」は、数年前まで由緒不明だったそうですが、戦国武将・松田憲秀(のりひで)邸の門柱だったことが判明しているそうです。茶室の柱として使用されていたと考えられています。

庭園内には、「雪見灯篭」、「春日灯篭」、「浮灯篭」という3つの石灯篭があるというので、探してみました。
3本足の雪見灯篭は、ほっこり系でどことなくユーモラスなたたずまいです。

「浮灯篭」は池の水面に浮かんでいるように見えます。小さいけれど、白いきれいな灯篭です。

春日灯篭は、奈良の春日大社にちなんで、鹿の彫刻が掘られている物が多いそうです。旧芝離宮恩賜庭園の春日灯篭にも鹿のモチーフが掘られていました。隣の穴が開いた面は、雲の彫刻と思われます。

園内は、まだまだ紅葉もこれからが本番という様子でした。
東京ではあまり雪は降りませんが、冬の庭園の風物詩である「雪つり」を見ることができるそうです。

旧芝離宮恩賜庭園には弓道場もあり、1時間140円で利用できるそうです。

アクセス
旧芝離宮恩賜庭園へのアクセスは以下の通りです。
- JR山手線・京浜東北線「浜松町駅」北口から、徒歩1分
- 都営地下鉄大江戸線「大門駅」から、徒歩3分
- 都営地下鉄浅草線「大門駅」から、徒歩3分
- ゆりかもめ「竹芝駅」から、徒歩10分
まとめ
モミジの葉が色づき始めた11月の「旧芝離宮恩賜庭園」を訪ねました。
都立文化財9庭園の中でも歴史ある、江戸初期からの大名庭園です。江戸初期の教養人が好んだ中国趣味が特徴的な庭園で、「西湖の堤」が見どころの一つです。
小石川後楽園の「西湖の堤」は上を歩くことができませんでしたが、旧芝離宮恩賜庭園では「水上遊歩道」という本来の目的を果たすことができました!
「山手線の駅から最も近い都立庭園」としてアクセスが良好な点も魅力です。機会があればまた訪れてみたいと思います。
フリーランスライター、都内在住2児の母。趣味は着物と和裁とお散歩。個人ブログで親子の着物ライフについて発信中(こども浴衣の作り方も公開中)。
ブログ:『着物好きが育てたら、着物好きの娘になったので…』