コロナ禍において、近隣の散策など近場に目を向けるうち、「こんなところにこんなものがあったのか」と驚かれた経験が皆さんにもあるのではないでしょうか。
私にとってそのひとつが「大賀ハス」という蓮の花でした。今回は、この「大賀ハス」が咲く修景池を有する「府中市郷土の森公園」をたずねました。
まずはお目当ての大賀ハスとご対面
早朝に開花するという蓮(ハス)の花。本来なら朝5時頃起床して…と考えていたところがうっかり寝坊し、実際に訪れたのは11:00頃。それでも美しく咲いてくれていました。

「大賀ハス」とは、ハスの研究者「大賀一郎博士」によって発見された、二千年以上前の古代ハスの種子を現代において発芽させたものです。博士の名をとって名付けられた「大賀ハス」。
ハス自体は千葉県で発見されたもののようですが、大賀博士が20年間府中に住まわれ、自宅で発芽処理をされていたこともあり、府中は大賀ハスゆかりの地とされています。


府中郷土の森公園内の修景池には、なんと30種類もの蓮(ハス)が咲き誇ります。
お恥ずかしながらここに来るまで知らなかったのですが、蓮って、4日間しか咲かないんですね。しかも、初日、2日目、と花びらの開閉をくりかえし、段々その開き具合が増し、4日目の午後には全部散ってしまうとのこと。
つまりここにある蓮のうち、中の花心(黄色の部分)が見えるほど開花しているものは、もう今日か明日にでも散ってしまうものであるということです。

「花の命ははかない」とはよく言ったものですが、ここまで明確にそれを実感させられたのは初めてでした。
ちなみに、蓮の花はよく仏教と結び付けられますが、なぜなのでしょうか。いくつか理由はあり、その由来などを追えば1記事では足りないくらい深そうなので、1つだけご紹介します。――「蓮は泥より出でて泥に染まらず」という言葉。
どろどろの沼地で泥の中に咲いても、そこから茎をのばし、泥に染まらぬ美しい花を咲かせる蓮のあり方が、仏教においてひとつの理想とされたようです。
府中市郷土の森には観光物産館まであります
当初「府中市郷土の森公園」とは、蓮の花が有名な単なる地域の公園かと思っていたのですが、それだけにとどまらないかなりの数の施設があるんです。
このあとご紹介する「郷土の森博物館」のほか、例えば野球場(2つも!)、サッカー場、バーベキュー場、テニスコート、総合体育館、ゴーカートのある交通遊園など、さまざまな年齢層の方が多様な用途で楽しめます。
そのうちの1つがこの観光物産館。府中で朝穫れたばかりのみずみずしいお野菜や、名産品などが並んでおりました。


府中市郷土の森博物館とその敷地内散策もおすすめ
せっかくなので、公園内にある有料施設「府中市郷土の森博物館」敷地内も散策してきました。(大人300円、開館9:00~17:00[入場16:00迄]※蓮の咲く修景池など公園部分は博物館敷地外のため常時入園可)

「府中市郷土の森博物館」は、常設展示室やプラネタリウムを持つ博物館本館、復元建築物、水遊びの池などがあり、府中の歴史・文化・自然を楽しく学べるスポットです。季節には、梅園の梅や、アジサイ、ヒガンバナなどが大変美しく咲き誇ります。
博物館、というと、建物の中を指すように思いますが、ここは、多くの建築物を含む森全体が一体となった野外博物館といえるでしょう。

入場後すぐ右手にみえてくる大きな建物が、博物館本館です。常設展示として、府中の歴史や文化にまつわるもの、そのほか、期間限定の特別写真展「星の風景」、企画展「東洋の焼き物たち」が開催されていました。

府中は昔の東京「武蔵の国」の国府(中心地)であったこともあり、遺跡が多く、それら市内遺跡からの出土品などを展示しているほか、今も伝統に沿っておこなわれる「くらやみ祭」にもスポットをあてています。

見頃は少し過ぎていますが、まだアジサイも楽しめました。敷地内では、府中市域の江戸中期から昭和初期の建築物を移築復元して保存しています。



当時の建築様式のままの「旧府中町役場」。なかなかおしゃれな町役場だったんですね。今は、東京都指定文化財となっているそうです。

こちらの「島田薬舗」は、1888(明治21)年に立てられた蔵造りの店で、伝統的な工法を再現し3年がかりで移築したそうです。
建物内では奇しくも、「衛生マスク」をガラスケース内に発見し、当時のマスクってどんなものだったんだろう…と(この時期だったからこそ)思いを馳せることになりました。
また、写真では見づらいかもしれませんが中央の黄色い看板、なんと「チョコラBB」の宣伝です。チョコラBBって明治時代からあったんでしょうか…ちょっと驚き。

気になるので調べてみたら、なんと!チョコラBBは、1952年に戦後の食糧事情下のビタミンB2不足を補うため、皮膚・粘膜疾患の治療薬として発売されたのが最初だそうです。
「女性のキレイと元気を応援するサプリ」という比較的現代的なイメージだった「チョコラBB」にそんな歴史があったとは…。おみそれいたしました。

小川のせせらぎにも癒される敷地内。この日は、そろそろ雨が降りそうな予報だったため急いで回りましたが、他にも鍛冶屋の実演をやっていたり、「わらぞうり」「竹とんぼ」を作って遊ぶなど昔懐かしいものづくりを体験できる「ふるさと体験館」などもありました。
全ては回れないまま帰ってしまったので、後ろ髪ひかれる思いで施設をあとにすることになりました。
まとめ
大賀ハス(6月~7月が見ごろ)めあてで行ったつもりが、隣接の博物館の敷地が意外に充実していて、300円でこれだけ楽しめたら充分すぎると感じました。
ただただ歩いて回れば1周45分ほどで回れますが、博物館の展示解説をじっくりながめたり、季節の花をめでたり、かなり数のある「つくる・遊ぶ」体験に参加したりすれば、半日は遊べる場所です。
お近くの方はぜひ!また、お近くでない方も、近隣すぎてお出かけの候補にも挙がらない公共の施設などが実は意外と穴場だったりするので、そういった場所を見つけてみるのも楽しいかもしれません。