今回のメインイベントはなんといっても、タイトルのとおり「築地本願寺でいただく18品の朝ごはん」。
以前メディアで取り上げられているのを見て、そのインパクトに「いつかきっと早起きして行く!」と心に決めてはや3年。今回、この「朝食を食べるためだけの小旅行」を、満を持して敢行してきました!!
正確にはこの朝ごはん、築地本願寺の敷地内にある「築地本願寺カフェ」で頂ける、1日50食限定のメニューです。人気のあまり、新型コロナ流行前には、開店前から行列が…という話もちらほら聞いていたので、念のため朝5時起きで、開店8時の30分前には到着。
平日で、通勤時間帯に重なっていましたが、7時台の東京メトロ乗車率は体感としては以前に比べ6~7割程度に落ち着いている気がします。(行き先もあるかもしれませんが)

雨の予報だったのであいにく少し曇り空ですが、こちらは、築地本願寺の正門を入って左手にある「築地本願寺インフォメーションセンター」。この中に朝食を頂ける築地本願寺カフェがあります。
行列は、思ったほどではなかったですが、それでも開店直前には15名ほどが並ばれていました。
入店後は、皆店員さんの誘導にしたがってスムーズに着席していきます。入店順にオーダーがとられ、そしていよいよ、念願の朝ごはんとご対面です!
築地本願寺でいただく「お寺の朝食」

こちらが、かねてからいただきたかった「18品の朝ごはん」です!ふだんは脇役が多い小鉢も、16品そろうと壮観ですね!おかわりもできるお粥と、お味噌汁を入れて18品です。
なぜ18品か?というと―築地本願寺のご本尊である阿弥陀さまは、全ての生きとし生けるものを救うため48の誓願をたてられたそうなのですが、その核となる「あなたを決して見捨てない」という「第18願」、18番目の誓願にちなんで、18品とされたそうです。
土地柄、築地江戸一の昆布の佃煮や、つきぢ松露の卵焼きなど、築地の名店の味が小鉢に盛り込まれているのも嬉しいですね。1品1品、じっくりと味わい、堪能しました。どれも丁寧に作られたものばかりで美味しかったですが、特に季節の小鉢と、合鴨の山椒焼きが味わい深く絶品でした!
ちなみにこの朝食を含め、築地本願寺では「開かれたお寺」をコンセプトに、2017年秋に大幅リニューアルが行われ、そのひとつとしてこちらのカフェやブックストア、公式ショップなどが配されたそうですよ!
築地本願寺の成り立ちを紐解く

そんな話題の朝食と同じかそれ以上に興味深いのが、築地本願寺の成り立ちについてです。
「築地」という地名は、海を埋め立てて「土地を築いた」ことに由来するのですが、そもそもこの土地は、1617年に浅草で創建された東本願寺が「明暦の大火」で焼失後、このお寺の再建のために埋め立てられたものだというのです。
「築地」は私たちにとっては古くから中央卸売市場があったこともあり、歴史や伝統といったイメージがしっくりくる場所のように思えますが、当時にしてみれば出来立てほやほやの新興の埋め立て地だったのですね。しかもこの本願寺移転がなければ今の築地が存在していなかったとは!
朝食を食べるためだけに計画した小旅行の割には、土地の由来を深く知ることができて、思わぬ収穫でした。まさに、「早起きは三文の得」!
築地本願寺の建築様式
また、築地本願寺にまつわる不思議は、名前の由来だけにとどまりません。
一度でも築地のこの通りを歩かれたことがある方なら、いわゆる日本のお寺の造りとは一線を画す「築地本願寺」の一種独特な雰囲気に目を奪われたのではないでしょうか。
古代インド仏教様式を模したような、まるでどこかからガムランが流れてきそうな荘厳な造りの寺院。すぐ近くの築地場外で生のまぐろをたたき売る「ザ・日本」な風景が繰り広げられているのに対し、ここだけ少し異質な空気が流れているような、そんな気さえします。

なぜ、いわゆる日本のお寺らしくない、このようなデザインで建築されたのでしょうか。
1923年の関東大震災による再度の焼失を経て、1934年に再建された築地本願寺ですが、現在の本堂は、帝国大学(現東京大学)名誉教授で建築史家の伊藤忠太博士の設計によるものです。
仏教伝来のルートを明らかにするためにシルクロードを旅した、大谷光瑞(当時の浄土真宗本願寺派門主)が、時を同じくしてアジア各国に建築研究のため旅していた伊藤忠太博士と出会い、それが縁となってこの本堂の建築に至ったとのこと。
伊藤忠太博士は、「仏教のルーツはインドであり、建築もインドのものでなければならない」と考えたようです。

本堂の両脇をかためるこの獅子像が、いわゆる狛犬の役割を果たしているのでしょうか。いえ、調べてみると、むしろ元々仏教の始まりであるインドでは仏陀の両脇に守護神として獅子像を置いており、これが日本に伝わる過程で狛犬となったそうです。

本堂入り口のステンドグラスも、オリエンタルな雰囲気です。建物全体の外観といい、このあと出てくる数多くの動物の彫刻といい、まさにシルクロードを旅した伊東博士でなければ作り上げられなかった、独特な仏教寺院となっています。

こちらは孔雀をモチーフにした像。孔雀は、阿弥陀経に説かれている鳥の一種。その姿や生態から、なにごとも包み隠さず自分の心をさらけ出すものの例えとされているようです。
本堂の中に入る前に、邪念はここで捨てていきなさい―そう言われているのでしょうか。

本堂に入ってすぐ左手にある階段の支柱には、牛が立ってじっとこちらを見ています。インドにおいて、牛は神様が乗る神聖な生き物。それにしてもずんぐりむっくりして、丈夫そう。ずいぶん重量がある神様でも乗せられそうですね。

ゾウもまた、インドでは神聖な生き物とされています。それにしても、先ほどの牛といい、こちらのゾウといい、階段を支える支柱にあつらえられたものだからとはいえ、どっしりとして、必要以上に貫禄がありすぎるような…ただものではない雰囲気を醸し出しています。

むむ?この掲示板の言葉、どこかで聞き覚えのある…?
そう、ドラマを見ていない方にはなんのことやら?かもしれませんが、高視聴率を誇り先日幕を閉じたドラマ「半沢直樹2」の名ゼリフをうまくもじってアレンジした「今日のひとこと」掲示板です。
流行や世情をうまく取り入れつつ仏教の精神を説いた、非常にわかりやすく心に留まる言葉のように思います。
こんなところからも、お寺を、広く、わかりやすく一般の人に開かれたものにしていきたいという思いが見てとれますね。思わず足を止め、パシャリ。
まとめ
築地本願寺は、なんと築地という場所が出来たきっかけとなったお寺であり、その建築様式や近年の進化をみても、「仏教のルーツを大切にする特異な建築や特徴的な朝食で人の心を掴み、開かれた場所を目指す」お寺でした。
ご興味のある方はぜひ一度早起きして、朝食かたがた築地本願寺を参拝されてみてくださいね。